ボイストレーニング概論1,,,「なぜ声が不自由なのか」

ボイストレーニング概論1

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岩崎ひろきです。

気が向いたので、こちらに記事をまとめて書いてみようと思います。全10回ほどで、まとめられたら良いですね。

ボイストレーニング概論、と大きく書いてみましたが、岩崎ひろきのところでどんなレッスンをしているのか、を伝えるものになればいいなと思っています。

近頃は「発声指導法を教えてくれ」なんてよく言われるものですから(言われるたびに、「私じゃなくて、私の師匠のところで学べば?」とちょっと思っているのですが)、皆様の何かのタシになることを、望みます。

私の経歴としては、中学にて合唱を1年、その後、西洋古典声楽を音楽大学教授(美しく明るいイタリア声の方でした)のもと2年学び、その後はライブバーにて黒人音楽を歌うようになりました。大学からはプロゴスペルグループに所属しています。ここ数年では、いわゆるハリウッドメソッドと呼ばれるInstitute for vocal advancementにて公認ライセンスを取得。その後は武田梵声先生のもと、民謡計量学、フースラー発声学を学ぶに至りました。

多くの良き先生のおかげで、声の育て方というのを知ることができました。そして、発声教育とは何か、たくさんの気づきを得ることができました。

まあ、長々とした前書きはこの程度にして、実践に移りましょう。

自分の声を知る、なぜ声が不自由なのか

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さて、ボイストレーニングをする前に、まず、あなたの「声」について考えてみましょう。

 

あなたの声はどんな声ですか?何が不満で、何が得意ですか?録音はしたことがありますか?ないならば、思い切って今、歌って、録音してみてください。どう思いましたか?

 

少し時間を取って考えてみてください。

 

さらに、もう一つ疑問を投げかけましょう。

 

あなたの今の声は、「いつから」ですか?これも時間をとって考えてみましょう。

 

,,,。どうでしょうか、答えは出ましたか。さあ、少しずつお話ししましょう。

 

ここで知って欲しいのは、どんな人の声でも、「後天的に作られたもの」だということです。もしかしたら、あなたはこう思っていたかもしれません。

 

「私の声はひ弱で、それから弱くて、小さい頃から声が小さかったのよね」

 

「私の声はもともと低くて、高い声は出なかったんだよなあ」

 

と。でも待って欲しいのです。生まれつき声が小さかったなら、お母さんにどうやって「おっぱいが欲しい」と泣いて伝えることができたのでしょう。

 

そう、人間には、「大音量で歌える能力」が、生まれつき備わっています。つまるところ、この能力を次第に失ってしまったのが私たちなのです。

 

中には、その能力を、できるだけ失わずに済んだ人もいます。そういう人が「最初から歌がうまい人」として、人気者になれるのかもしれません。

 

そして、どうして失ってしまったのか、についても考えてみましょう。

 

現代社会において、私たちは、「大音量で声を出す」という必要性がありません。むしろ、日本社会においては「大音量で声を発する」ということはあらゆる場所で忌避されていると言っていいでしょう。学校でも、電車の中でも、人によって家の中ですら、突然大声を出したらきっと怒られたことでしょう。

 

「いやいや子供の頃はたくさん、わらべうたなど、友達と歌っていた」と思い出せる人もいるかもしれません。現代日本社会においても、未だにわらべうたの慣習は受け継がれています。子供達の遊ぶ時の声に耳をすませば、メロディをつけて、あらゆる歌遊びに没頭していることがわかります。

 

しかしながら、民族音楽学の研究の第一人者、小泉文夫先生が批判したように、日本の音楽教育は、「西洋音楽(ここではクラシック音楽)」に偏りがちですから、わらべ歌を楽しんでいた子供達も、小学校に上がると突然にベートーヴェン、モーツアルトなど、いかにも高尚な音楽の譜面に向き合わされ、「音楽への苦手意識」を植え付けらてれしまいます。

 

(現在の音楽教育は大部分見直されている、とも聞きます)

 

ですから、音楽教育においても、社会生活においても、「喉で、声で自由に遊ぶ、自由に発声をする」という機会が、とにかく減ってきているということが言えるのです。

 

赤ん坊の頃、大声で一日中泣き叫ぶことができた皆さんも、社会生活でのルールを覚え、音楽教育で「歌への苦手意識」を植え付けられてしまった日には、大変です。

 

大きな声を出さないどころか、どんどんと自信喪失し、なおさらに歌が下手になってしまいます。

 

本当は、皆歌手だった

 

「じゃあ、そういう環境、教育がなければ、みんな歌が上手なのか?」と思ったかもしれません。

 

それは、「YESと言えるのではないか」、という期待が私は持ってます。20世紀最高のボイストレーナーの一人、FREDERICK HUSLERは箸「SINGEN」の中で、こう語っています。

 

「人間は生まれながらにして、皆、歌手である」と。

 

これは本当なのでしょうか。実証するには、シンプルな暮らし、社会構造を持っている部族の歌を聴いてみるといいかもしれません。

 

ここで、アフリカ、カメルーンのバカ族の歌を聴いてみましょう。

 

バカ族は狩猟採集民族です。彼らの暮らし、働きは常にグループで行われ、一致団結することで彼らの社会生活を成り立たせています。

 

村に災いがあった時、災いがあった状態を、調和のとれた状態(=「エキミ」)に戻すため、歌を歌うそうです。

 

彼らは職業歌手ではありませんが、小さな子供から、お年寄りまで、皆、「歌えます」。メリスマ(=こぶし)や、ベルト(地声の張り上げ)、リズム感も、驚くべきレベルにあります。

 

彼らの見事な歌声は、「大昔、誰もがシンプルな生活にあった頃、それは誰もが自由に歌える喉を持っていたのではないか」という期待を私たちに持たせてくれるのです。

 

ボイストレーニングとは、失った声を取り戻す作業

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そう考えると、ボイストレーニングが一体どんな作業をするのか、少し、見えてくるのではないでしょうか。

 

そう、「失った声を、失った喉の使い方を取り戻す作業」に他ならないのです。

 

それは、無数の喉の筋肉の張力を強め、そして喉の神経を時間をかけて整理していくことによって、可能になります。

 

ボイストレーニングとは、「上手に歌うコツ」を探す作業ではありません。ボイストレーニングとは、「いい発声を喉に癖付けること」でもありません。(いい癖を身につける、というのは実はとても危険な考えで、これもそのうちに記事にしましょう)

 

ボイストレーニングとは、「喉の筋肉を蘇らせ、喉の神経を整理していくこと」なのです。これによって、あらゆる声が実現されます。あらゆる声の症状が改善されます。

 

・音域が狭い

・声が小さい

・地声が出ない

・裏声が出ない

・ビブラートがかからない

・メリスマ(こぶし)全般が苦手

・深い声が出ない

・鋭い声が出ない

・裏声と地声が繋がらない

・声がひっくりかえる

・声がひっくり返らない

・シャウトができない

・声がいつも割れた感じになってしまう

etc,,,

 

これら全て、訓練によって克服することが可能です。声の世界は、無限に広がっています。失ったものを、取り戻す。このコンセプトと、その取り戻し方を知る。

 

これによって、あなたの喉は、声は、まだまだ自由になれるのです。これこそが、ボイストレーニングなのです。

 

岩崎ひろき

 

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