仮想中声区と、ベルティングフロンティア

 

今、こんなシリーズを書いています。

ですが、今日はちょっと脱線してみます。脱線というか、たまには普通に発声 / ボイトレの話をしてみましょう。

仮想中声区について

以前「仮想中声区」の話をしました。この概念、かなり重要だと思うのですが、その後あまり書いていませんでした。自分のためにもわかりやすくメモをつけていきましょう。

仮想中声区

裏声的な音声パターンの一種。C5以降において、母音を広げると、聴覚的には「地声のような響き」を持ちやすい。リスナーには「ベルティングだ」と騙しうる音色になる。そのまま上昇し、E5以降はレーニングされていないと、崩壊しつつ頭声区に以降しやすい。A4より下の音域では、本人たちの体感としては「ただの裏声」のように感じられる。また、胸声区にももちろん連結がしやすい。

声区とは、そもそも発声器官のシステムそのもの。なので、通常「2声区」しかないと考えます。裏声と、地声、ということです。その中間のミドルボイス、などは音声現象として存在するわけなのですが、それは声区、ではありません。あくまで音声現象、としか言いようがありません。

※声区について、アカデミックな現場でも普通に「3声区」前提で論じている人も多くいます。声区の概念をある程度ゆるく考えていく方がスタンダードなのかもしれませんね。

ですが、女性の場合、とにかく裏声が発達しやすい。普段から裏声で会話する人も多くいるからです。結果、裏声をかなり低音域まで下降させることができるようになったり、地声とおんなじような響きを生み出すことができるようになります。それはまるで、裏声と、地声、そしてもう一つの「声区」のような響き。そのことを「仮想中声区」と呼んでいます。

この仮想中声区、女性にしかありません。(!)。これまで3000人ほどレッスンしてきましたが、男性では聴いたことがありません。男性の中にも感覚として中声区を持っている人は多いのですが、女性ほどにはレジスターとレジスターの合間に「裂け目」がありません。これから出会うかもしれませんが、男性では通例「ない」と考えるのが自然でしょう。

一方で、女性の場合だと、頻繁に出会うことができます。レッスンをしていると、「あれ?」ということがしばしば。これは「仮想中声区」として捉えることができます。複雑に思考することが難しければ、生徒さんもシンプルに「中声区がある」くらいに捉えて良いかもしれませんね。

ベルティングフロンティア

ところで、こんなものも以前作ったのでした。仮想中声区のアイデアから派生した出てきたアイデアです。

「地声」と「裏声」は、リスナーにとっては実は「声区」ではなくて聴覚上の「印象」。ということを指している図なのですが、これはまた明日あたり書きましょう。

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