「ユニット感」を教えていくのが大事だと思っています。なぜなら、筋肉とは、構造とは一つのベクトルだけでは動きません。また、「どんな組み合わせでもありうる」というわけではないのです。つまり、ある程度一緒に動く筋群たち、つまりユニットには限りがあるのではないかということです。何でもかんでもミックスすることはできません。「絵を描くように自由に絵を描いていいのです」とは、正直思っていません。最終的に、「構造体」としてスッと立ち上がるように筋と骨の組み合わせを考えなくてはいけないのです。それを僕は「ユニット」と呼びます。そしてそれがテンセグラル(張力による統合体をイメージすること)に思考することだと思うのです。
雑なイラストですが、ひだりが前、みぎが後ろです。
前はオトガイ舌骨筋(GH)、後ろは中咽頭収縮筋=「舌骨咽頭筋」です。「HP」と読んでみましょう。
こんなユニットもあり得ます。舌、舌骨、オトガイ、中咽頭収縮筋,,,,。
さて、HPは後方部に声道の「トンネル」を形成します。
トンネルの微調整は、このHPが肝になるのですが、HPを単体で取り出して考えてはなりません。TENSEGRAL VOICE WORKという視点では、「構造を成り立たせるための張力を一つだけ取り出してはいけない」というルールで思考するからです。を意図的に構造を変化させたいというのであれば、必ず土台が生まれます。そして土台を頼りに、キーになる筋肉が収縮するのです。そうしてやっと明確なベクトルが生まれます。土台はどうやって作られるか。やはりそこにも多くのベクトルが生まれるのです。
ですから、HPによってトンネルを形成し、また制御したいと考えるのであれば、HPが付着する舌骨の位置がポイントになります。この場合はHPの反対に位置するGH(オトガイ舌骨筋)が重要になります。前後に引き合うようなベクトルを想像し、またこのユニットを練習していくのです。
ユニットは、かなり多くの数、作ることができます。最低限のルールをもうけて、ユニットを構築していきたいものですが。また、新たに生まれたユニットは、いくらでも練習して良いものです。ユニット単位で練習をすることは、歌手に身体の統合力をもたらすからです。