米国解剖研修日記 初日
岩崎です。
本日から番外です。フェイスブックでは周知しておりましたが、米国まで、人体解剖に来ています。
5日間の研修なんですが、今日、初日を終えました。以下、これは私自身のためのメモです。
読み難い、と思うので、それでも、という方のみお付合いください。
喉の中身を知りたくてアメリカまで来た、そういう人間のメモに過ぎませんが。
以下、日記です。
●初日/最大の緊張
おそらく今日が5日間の中で一番緊張度が高かったのではないかと思う。
内臓などには行き着かないが、何より、8体の「Dead Body」を見るわけだからだ。
Tod氏が「じゃあ早速見てみましょうか」というと胸が高鳴った。期待と不安が入り混ざる。
今回の解剖ではフォルマリン加工されたものは使わない。死後すぐに冷凍保存された、
加工なしの「生身の体」だ。それを5日間かけて全身解剖していく。だからこそ参加したのだ、という参加者もいた。それほどに価値のあることだ。
私にとっては、だからこそ、やはり期待と不安がそれぞれ均等に大きい。
●献体決め/他の参加者について
Tod氏が「自分でどの献体にするか、決めなさい」という。
皆、熱心に観察を始める。
私は、献体を見ると、やはり少し抵抗があった。
周りの参加者はといえば、抵抗があるようには見えなかったが。
この点は、後日聞こうかとも思う。
参加者は、理学療法士、柔道整復師、パーソナルトレーナー、ピラティスインストラクター、ロルファーなどが多い。ツワモノ、だらけであった。変わっていたのは、歯科医師、彼女とはたくさん話ができて嬉しい。かなりラディカルな思考の持ち主で、楽しい。
そうだろうと思っていたがボイストレーナーは私だけであった。
結局、理学療法士、山本先生の助言もあり、瘦せ型の女性が僕の担当となった。
●Todのデモンストレーションに勘違い/恐怖心
Todがデモンストレーションを始める。
メスを皮膚に入れ、表皮と、皮下組織(脂肪が非常に多い。)を切り離し、深筋膜をあらわにしていく。
全身の前面をこの状態にするのが今日のゴールになる。
Tod氏、のデモンストレーションが鮮やかすぎて、「なんだ簡単なのか」と思うってしまう。
が、実際やってみると、難しい。
皮膚をつまみ、メスを入れてくわけだが、メスが深すぎると、筋膜まで傷つけてしまう。
ちなみに、実際にワークし始めてから、恐怖心などがやっとなくなってきた。
●筋膜とは、人間の体の全体性とは
全体的に筋膜が露わになってきてから、解剖学者の一人が、
「足首を今から私が動かすから、あなたは頭を持ってみなさい」という。
持ってみると、驚く。
足首を動かすと、頭の方まで動きを感じる。
筋膜とは筋肉を包み込む袋のようなものであり、だから、筋を一部分だけ取り出して動そうとすることも、鍛えようとことも、現実的ではない,,,
とはよく聞くことだが、まさにそれはもう、否定しようがない。
また、皮膚をはいだ状態の方が、圧倒的に全身に柔軟性が出る。
高年齢であろう献体だろうが、柔軟性が出る。
それでは体の硬さというのは、何が産むのか、
体の柔らかさは何が産むのか。
筋膜が重要なのか、皮膚なのか、腱なのか、神経支配なのか。
ボディワーカーたちにとっては大きな問題であるようだ。
●その他
・広頚筋があまりに薄く、もはや認識不可能なまま解剖が進んだ。
・担当の献体の肩甲舌骨筋があまりに小さく、声をあげた。「嘘だろう!」と。
明日以降、他の献体も調べたい。
・8つの献体の喉頭を触知。形状、大きさそれぞれ差がある。
胸鎖乳突筋の筋腹の差が大きい。
・一体、喉頭が深く深く埋まっていた献体があった。
もはや深く固着しているように見え、左右には全く可動域がない。
山本先生と「これは声を出すのは辛かったろうね」と話す。
・喉頭筋群の多くを英語で言えないことに大変な歯がゆさを感じ、恥じた。大問題だ。
・8つの献体全ての喉頭を触って回っていると、解剖学者に「あなたみんなの触ってるのね!」と少し笑われた。「そのために来たんだもの!」と返した。
・献体の背中に十字架の、そして右肩に可愛いピンクのバラのタトゥーがあった。病気の後も献体に残っている。人生を想像し、その人が身体を提供してくれたのだ、そういう心の持ち主だったのだと思うと、泣けてきた。心から感謝している。
・写真は解剖を行うラボの外。スクールバスが可愛かったので撮影。
・人体解剖を行う恐怖心は、身体への興味が強ければ、容易に打ち勝てた。