※2020.11/2 にこの記事は書かれました。随時、訂正、加筆していきます。
喉頭のテンセグリティ
喉頭のテンセグリティについて、考えています。
テンセグリティ、とは、「張力と圧縮物による、統合体」。バックミンスターフラーによって発見されたシステムだとされています。
ストローと輪ゴムでできる簡単なテンセグリティモデルを作ってみました。大事なのは、ストローとストローは連続していない、ということです。人間の体でいう骨に当たるわけですが、人間の体の場合は完全に「不連続」ではありません。けれど、輪ゴムに当たる、筋肉と靭帯、これらによって、構造をなしています。
こちらは喉の形をしたテンセグリティモデルです。簡単な構造ですが、喉がフルフルと浮いているのを表現しています。
テンセグリティ構造を人体に適用することは運動指導者や、治療家の間では広まっている考えでしたが、「喉」をテンセグリティ構造に当てはめるという考えはなかったように思います。
これは私が描いた、喉のテンセグリティ模型の設計です。真ん中にある甲状の圧縮体が、「喉仏」です。またその上にある蹄鉄のようなものが舌骨です。これらを、緑色の筋肉で、つまり張力体によって、構造化させています。
ボイストレーニングの世界は、あらゆるメソッドと、ケアであふれています。「ほとんどのメソッドはいい加減なものではないのか」と思った時期もありましたし、一方で「逆に全てのメソッドに意味があって、効果がないものなんてないのではないか」とも考える時期がありました。
これは、喉をテンセグリティ構造で捉えることで一つ結論が見えてくるのだと、確信を持てました。
・舌周りをマッサージすると、なぜかやけに声が出る
・息を吸いながら歌うと、なぜか調子が良くなる
・喉仏を高くして変な声を出すと、なぜか調子が良くなる
こういう現象に我々ボイストレーナーは日々出くわすのですが、これらは効果を猛烈に感じる人、とそうでない人がいます。
効果が出る場合は、
「テンセグリティ構造において、張力に問題をきたしている箇所にアプローチをかけることができた」
のだと言えるでしょう。効果を感じない場合は、その部位の張力に問題がなかった、ということです。
こう言ったぼんやりと「あちこちを鍛えればいい」どまりであった僕のボイストレーニング理論を、テンセグリティ構造が柔軟性を持って統合してくれると思えたのです。
テンセグリティ構造があらゆるボイストレーニングへのリスペクトになる
先述したように、どこかのタイミングから「あらゆるボイストレーニングには価値がある」と思うようになりました。世の中には舌ボイトレや、表情ボイトレ、喉ボイトレ、呼吸ボイトレ、本当に数多くの練習方法があります。
喉のテンセグリティを見つめた時、それは最終的に指の末端までを内包することができます。つまり、あらゆるボイストレーニングメソッドの価値を認めることができます。舌の問題も、表情の問題も、喉の問題も、体の問題も、すべてそれはテンセグリティ構造の一部分です。そしてこれらは、張力によって、互いに響き合っています。例えば、舌がひしゃげれば、舌に関係なさそうな、声帯本体の張力さえも変わると思っています。そういう関係なさそうな領域まで、互いが、互いに共鳴しあっているはずです。
これは、あらゆるボイストレーニングを認める考えです。あらゆる部位に働きかけることが、意味がある、ということになります。「インチキボイトレ」「本物のボイトレはどれだ」とつい我々は思ってしまうのですが、あらゆる部分は、全体構造の大事な役割を必ず担っていることをテンセグリティは示すわけですから、つまり、全てのボイストレーニングが本物だと認めることができるでしょう。「効果が出ない」は、「問題がない」なのです。
…
今、考えていること、そうであってほしいと思うことを書いてみました。これはずっと続けられる研究になるのではないかと、この2週間ほど、心が踊っています。アメリカにて解剖に参加したのが、もう4年前。人体構造全体の勉強に、再び戻ろうと思っているところです。この記事には不勉強な点がおそらく無数にあるかと存じます。気づきがありましたら、ご指摘いただければ幸いです。
岩崎ひろき